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2008-09-29(Mon) [長年日記]
_ [misc] 日経朝刊:連載小説「望郷の道」 完結
日経朝刊に連載されていた小説「望郷の道」(北方謙三)は本日分の409回を以て完結。毎日楽しみにしていたのだが、爽快な読後感があるのであえて終わって残念とはいわない。一人の男が才覚と努力で周りの人間を巻き込みながら商売を広げ、一度は追放された故郷に戻ることを夢見るこの話は、久しぶりに日経の朝刊にふさわしい新聞小説だったと思う。というのも、ここしばらく
「話が重苦しくて朝から読む気にならない上、やっと話が大きく動き出す気配を見せたところで作者と日経がもめて連載終了になったアレ」やら
「悪役とされることの多い平清盛を改革者としてとらえる切り口が新鮮だったものの、当時の世相に乗っかろうとする姿勢が露骨すぎたところに盗作疑惑まで加わったアレ」とか、
「序盤は期待できそうだったが最後はばたばたと終わってしまって消化不良の感が強い、インパクな作者のアレ」など、
どうも読後感のすっきりしない連載が続いたからだ。当然、
話題にはなっただろうが全国紙の朝刊にはふさわしくないアレとアレ
は論外。
「望郷の道」の主人公*1は次々に降り掛かる難題を切り抜けながら見事に一歩先を読んで成功を重ねて行くが、「おいおい、そううまくはいかないだろう」と思わせないところは作者・北方謙三の筆の力による。日露戦争の時代の話だが競合との差別化、海外での起業、品質管理、新規事業の展開、新製品開発、次世代の育成、硬軟を使い分けた社員の掌握術など、まさに日経向きの内容が次々と繰り出され、そこに家族や社員などのエピソードも絡んで飽きることがなかった。
主人公が次の活躍の一歩を踏み出したところで連載は終わった。いい雰囲気で終了したので不満はないが、続きが読みたい気もする。登場人物の中には何かの伏線を張ったまま終わったと思われるものも少なくないので、もしかしたら、と少し期待している。
*1 作者の曽祖父で新高製菓の創業者、森平太郎氏がモデルとのこと。